人気カフェの自家製コーヒーゼリーが最高でした。

私は長い間飲食業界で働いてきましたから、コーヒーに対する思い入れは数々あります。今回はコーヒーゼリーについてのお話です。


私の勤めていたレストランでは何品かのメニューを自家製で賄っていました。コーヒーゼリーもその一つです。

作り方は特に難しい点はありませんが、通常の豆よりは媒染度の高い物を使用するようにしていました。多く出る季節はやはり夏場であり、アイスコーヒーも飛ぶように売れていたことを思い出します。

来客の少ない間に一気にアイスコーヒーを作り置きしていたのですが、一旦出始めるとそれこ際限の無い注文の嵐となり、一台しかないコーヒーサーバーの使用不可のランプが消えることを待ち続ける日常でした。コーヒーゼリーも私の担当で、時間の兼ね合いでの作業だったことを思い出します。ゼラチンに適量の水を加えて、出来るだけコーヒーの温度が高い間に溶かし込み、容器へと注ぐ。それだけの作業が、アイスコーヒーを冷ます作業の間にもどかしく思えてなりませんでしたね。

お客へコーヒーゼリーを出す際には、型の淵を軽く抉ってから湯煎すると、きれいに出すことが出来て、その形が整っていればOK。

そこへ生クリームと少量のブランデーを専門の器具でたらし込み、お客の元へ。ガムシロップで好みの味に出来るような仕組みでした。長い間そのレストランで働いていたのですが、私は一度も商品としてのコーヒーゼリーを味わったことはありませんでした。

ただ、ボウルの底に残った汁が固まってしまった物を味見の積りで口にしたことはありますけれど。特に味付けの無いそれを美味だと感じたことはありませんでしたが。でも先日、思わぬ方形でコーヒーゼリーを食する機会に恵まれたのです。知り合いの料理上手の同性の友人が自宅へ招いてくれ、彼の手作りをごちそうになりました。コーヒーゼリーって、深い味わいなんだなあ。

自然とそう思えると、忙しさにかこつけて、お客をもてなすという精神が私には無かった、ということを感じ、機械的に作業をしていただけの姿に恥じ入ってしまったのです。時間はもう戻りませんが、あの時のお客にもう一度心を込めて作って食べて貰いたい。

スプーンの生クリームを嘗めながら、そんな思いにもしばしの間浸った私でした。